『怒り』小説と映画

読書の好みは近代日本文学なのだけど、時々ドキドキしたりゾクゾクしたりするような小説を読みたくなります。しかし私は臆病者なので、そういう小説の場合は読んでいてもラストがどうなるのか気になって不安で落ち着かなくてソワソワしてしまいます。一気に読了できないときは、ついつい解説とか時には後ろのページを先に読んでしまう、推理小説の読者としていけないタイプなのです…。

そんな私が最近読んだのは吉田修一『怒り』。書店で平積みされているのを見て気になって購入しました。

以下、内容に触れているので、知りたくない方はご遠慮くださいませ。 

怒り(上) (中公文庫)

怒り(上) (中公文庫)

 
怒り(下) (中公文庫)

怒り(下) (中公文庫)

 

 はじめて読んだ吉田修一作品、ハラハラして最後まで読み進むのが疾走する感じに似て心地良かったです。でも、凄惨な事件現場の描写や犯人の得たいの知れない不気味さはおぞましかった。結局、事件の真相は解明されないので、すべては判らないまま。犯人が本当はどういう人なのかも判らない。だからこそ残虐な犯罪と善良な人々に溶け込んで普通に生活している姿とが結びつかず、そこにゾッとします。

タイトルにもなった「怒り」もどういうことなのか考えさせられます。読み進めていくにつれ、人を信じることの難しさについて書かれているような気がして…。人を疑うのは容易なのに、人を信じるのはこんなにも難しい。相手を信じられなかった自分に対する怒り、無関係な人に八つ当たりのようにぶつけた幼稚な怒り、信じていた人が自分の思っていたような人ではなかった、自分を信じてくれなかったった悲しみ、やり場のない怒り、それとも…?

この小説、映画化されるのですね。キャストを見て驚きました。小説を読んでいるときは犯人と、それと疑わしき三人の男を同じ顔だと思って読んでいたので、まさか三人の俳優が演じるとは。面白そうなので映画も観てみたい。 

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中でも楽しみなのは妻夫木くんと綾野剛のゲイカップルです。妻夫木くん、この役ぴったりだと思う… 既に妻夫木くんを当てはめて読んでいました。